Netflixで配信されている「愛の不時着」。
日本でブームになったのは2020年、コロナ禍真っ只中だった。
その影響もあってか、配信から約1年以上の長きにわたり、Netflixの日本総合ランキングTop10入りをキープするという快挙成し遂げた。
そして、この記事を書いている2021年12月3日時点において、再びTop10入りを果たしている。
これって、思った以上にすごいことなのでは?
新規で視聴する人も少なくないとは思うけど、たくさんのリピーターがこのドラマを支えているのだと推測する。
かくいう私も、何度となく「愛の不時着」をリピートしている。
ここでは、なぜ何度も「愛の不時着」を観てしまうのか、その理由3つについて綴ってみたい。
理由その1:忘れられない男「リ・ジョンヒョク」
ヒョンビンが演じるリ・ジョンヒョクにどっぷりハマる
私は基本、同じ作品を繰り返し観ることをしないタイプだ。
例外はもちろんあるけど、韓ドラ沼にどっぷりハマっている昨今、次々と配信される新作(旧作も)の視聴に忙しく「何度も同じ作品を観ている時間がない」という事情もある。
なので、一度観たドラマを再観するモチベーションは低い。
しかし、「愛の不時着」だけは違う。
実際に、何度も繰り返し視聴した。
というか、何十回もだ(しかも1話から通しで)。
それはいったいなぜなのか?
答えは、リ・ジョンヒョクに恋をしていたから。
実際のところ、ドラマを視聴し終えたばかりの頃は、その恋心がリ・ジョンヒョクに対するものなのか、あるいはリ・ジョンヒョクを演じているヒョンビンに対するものなのか、判断がつかなかった。
それを確かめるべく、ヒョンビン主演のドラマや映画を見倒した。
確かに、ヒョンビン演じるキャラクターはどれも素晴らしかったが、リ・ジョンヒョクに出会った時のようなときめきは感じなかった。
それでも、俳優ヒョンビンが演じていることがこの想いに大きく影響を及ぼしているのは間違いなく、つまるところ私が惚れているのは、ヒョンビンが演じるリ・ジョンヒョクなのだ。
そして、こんなにも強烈なまでにリ・ジョンヒョクに心惹かれる理由は、リ・ジョンヒョクが「理想の男」だからに他ならない。
その「理想の男」っぷりとは・・・
- 優しく、思慮深く、誠実。そして純粋
- 愛する女をなんとしても守ろうとする情熱を持ち合わせる
- その一方で、冷静沈着な一面も(弱めのツンデレ)
- 感情表現が豊かなタイプではなく冷たいようにも見えるが、部下思いの良き上司
- 心に抱えた傷によって見え隠れする「影」が魅力となり、人を惹きつける
- どこまでも一途に愛する女を思い続ける
- 完璧なルックス
これ、ときめかないワケがない。
たとえ結末を知っていたとしても
とはいえ、ドラマの主人公というのは、往々にして似たような資質を持っているもの。
でも、「愛の不時着」は一味違う。
その鍵は「舞台の設定」にある。
物語の舞台は朝鮮半島の北と南。
そこはどちらの国にとっても、最も近く、そして最も遠い場所。
その、38度線が分つ北と南、それぞれに属する男女が出会い、恋に落ちる。
同じ民族なのに、共に過ごすことが違法にもなり得るという、世界を見渡してもなかなか例のない現実が背景にはある。
つまり、たくさんの障害に立ち向かわなければならない流れになるのは必至。
困難は絶対に避けられない。
そしてこの極端な設定こそが、リ・ジョンヒョクの持つ資質の良き部分を強化する効果をもたらす。
たとえば、リ・ジョンヒョクによってユン・セリが享受する、「必ずや助けてくれる安心感」「そばで見守ってくれる温かさ」などは、平凡な日常の中ではそれほど際立たない。
つまりは「ときめき」を呼び起こさない。
しかし究極の状況に落ち入れば話は別だ。
危機意識を高く保つというのは、常に緊張状態にあると言えるわけで、吊橋効果も絶大だ。
最も顕著な例は、空路で南に帰るはずのユン・セリが銃撃戦に巻き込まれた際、自分が盾なったリ・ジョンヒョクの行動だ。
ユン・セリの安全を確保するために彼女に内緒で護衛したことも、後にその事実を知るユン・セリを一気にときめかせる。
それは視聴者にとっても同じで、リ・ジョンヒョクが強烈に心に残る存在になっていくのだ。
とにかく、視聴者はユン・セリの気持ちになりきって、リ・ジョンヒョクの行動に一喜一憂し、感情を揺さぶられまくる。
そしてその感覚を「もう一度味わいたい」と切望するがゆえに何度も繰り返し「愛の不時着」を観てしまうのだと思う。
これは一種の中毒とも言えそう。
それともう一つ。
一度リ・ジョンヒョクに恋をすると、他のラブストーリーを観ていても、リ・ジョンヒョクが頭にちらつくのだ。
「あ、こういうところ、リ・ジョンヒョクに似てる・・・」
とかなんとか。
まあ、強いて言うなら、昔の恋人を懐かしく思い出すのに似ているかも。
そして再び、リ・ジョンヒョクに会いたくなり「愛の不時着」に引き戻される。
これはもう運命みたいなもので、「15話ラスト」で生死を彷徨うユン・セリが見た夢と気持ちは同じ。
ちなみに、ユン・セリは夢の中でこう言う。
時間を巻き戻しても、100回巻き戻しても、
あなたと出会い あなたを知り 恋に落ちる その危険で悲しい選択をすると 私は分かっていた
これに倣えば、
「たとえ(物語の)結末がわかっていても、あなたを知り 恋に落ちる 「愛の不時着」観るという行為をやめられないと 私は分かっていた」
と言う感じ(おおげさ)。
ともあれ、これだけ強い印象を残した架空の人物、リ・ジョンヒョクは、多くの女性にとって「忘れられない男」であることは間違いない。
【関連記事1】視聴半年後にリ・ジョンヒョクへの想いを書いたnoteです
理由その2:ユンセリのコミカルさとシリアスさのバランスが秀逸
圧倒的なテンポの良さこそが、良質なコメディに通ずる
ユン・セリを演じるソン・イェジンはどちらかといえばシリアスな役柄が多い。
実際のところ、美しい彼女のイメージはコミカルというよりはシリアス役がハマる。
しかし、「愛の不時着」では、コミカルさが炸裂。
その一方で、リ・ジョンヒョクとの切ない恋においては、シリアスな場面も多々登場する。
つまりは、コミカルさとシリアスさのバランス。
これがなんとも絶妙で、「愛の不時着」を何度も観てしまう理由のひとつだ。
とにかく、ユン・セリは表現力が豊か。
リ・ジョンヒョクが感情表現をしない分、彼女は思いっきり弾けている。
特に北朝鮮編ではその傾向が顕著。
まずは、リ・ジョンヒョクとの出会いのシーン。
非武装地帯に不時着したにもかかわらず、リ・ジョンヒョクを脱北兵と勘違いしたユン・セリが、
「大韓民国へよく来てくれました」
と真面目に言ってみたり、調査を受けろと冷たく言い放つリ・ジョンヒョクに、
「取り調べと言いながら、罪のない私を美人スパイに仕立てて拷問する気なのね!」
と早口で捲し立てたりもする。
とにかく、不時着するまでは見せなかったコミカルな一面を、リ・ジョンヒョクと出会った瞬間に発揮するのだ。
この「ユン・セリのコミカル度」がドラマの肝のひとつで、第五中隊員たちとの掛け合いや、村のお姉様たちとの絡みで炸裂する。
また、恋の相手であるリ・ジョンヒョクに対しても、堂々と変顔を披露。
なんというか、美貌の女経営者であったはずのユン・セリが、可笑しみ溢るるキャラクターとして存在感を示すのだ。
一方で、リ・ジョンヒョクとの別れのシーンでは、迫真の演技で視聴者を圧倒する。
軍事境界線での別れは涙なしでは観ることはできない。
「もう会えないの? 二度と会えない? 一生?」
ユン・セリのその言葉はリ・ジョンヒョクでなくても心打たれるはず。
そしてこの場面は、何度も繰り返し観てしまうシーンの代表格でもある。
全てはソン・イェジンの演技力の賜物なわけだが、コミカルとシリアスのギャップに、視聴者は心をグッと掴まれてしまうのだ。
ともあれ、ロマンティックコメディ「愛の不時着」では、コメディ部分が物語の良きスパイスとして随所に挿入されている。
そして、その中心にいるのは、第五中隊員でも北朝鮮の村人でも、セリの会社の部下たちでもない。
間違いなくユン・セリがその中心に君臨し、彼らの面白さを引き出す役目を担っているのだ。
美しきユン・セリが、圧倒的なテンポと早口で捲し立てる場面の可笑しみは、何度でも味わいたくなるのであった。
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理由その3:もう一度聞きたいと思わせるセリフたち
「愛の不時着」にはもう一度聴きたいと思わせるセリフが散りばめられている。
そのセリフを思い出すだけで、劇中のシーンが即座に浮かび上がり、あっと言う間に「愛の不時着」の世界に浸れる。
ここではお気に入りのセリフ5つをご紹介。
【その1】第5話&最終話
"間違った電車が時には目的地に運ぶ"
舞台は北朝鮮。
偽装パスポート用の写真を撮るために、平壌まで旅行をするリ・ジョンヒョクとユン・セリ。
停電により止まってしまった電車から降り、焚き火の前で一夜を明かす場面でユン・セリから出た言葉がこれ。
それまでリ・ジョンヒョクに迷惑ばかりかけていたユン・セリが、初めてリ・ジョンヒョクの心の傷を優しく包み込むシーンでもある。
この言葉は最終話で再び登場。
「愛の不時着」のキーワードであると同時に、ドラマの根底に常にあるテーマでもある。
【その2】第9話
男と会ってもいいし 何もなかったように過ごしてもいい
その代わり 孤独にはなるな
僕がいるから
そばにいなくても 君が寂しくないように いつも思っている
いつまでも幸せでいてくれ
ついに南へ帰ることになったユン・セリとリ・ジョンヒョクとの別れのシーン。
お互い想い合いながらも、それは叶わぬ恋だと知っている。
運命の相手と思いながらも別れるしかない二人。
そして、リ・ジョンヒョクの願いは無事に、ユン・セリを日常に戻してやること。
そんな彼の心からの言葉は、ユン・セリへの思いやりに満ちている。
北の舞台における一番の泣きどころはこのシーン。
リ・ジョンヒョクの優しさが心に沁みる場面だ。
【その3】第12話
見てみたい
君に白髪が生えて シワもできて 老いて行く姿を きれいだろうな
韓国で再開を果たしたリ・ジョンヒョクとユン・セリ。
叶わぬ夢を語り合う二人のせつなくも、幸せな瞬間だ。
そして、これほど気の利いた告白もないだろう。
たいていの女は、年々自分の若さが失われていくことに少なからず恐れを抱いている。
でも、愛する男が「その姿を見てみたい」と言ってくれる。
そして「きれいだろうな」とも。
この言葉からは、年老いていくこと(それは時間を共に過ごすということ)への「敬意」と「切望」が読み取れる。
「ずっとそばにいたい」と言われるよりも深く刺さる言葉であり、彼らの置かれた状況を改めて思い知り、悲しくもなる場面でもある。
軍人としてではなく、一人の男として寛ぐ、リ・ジョンヒョクの素直な本音が聞ける貴重な場面だ。
【その4】第14話
そう過ごすうちに 人生が楽しくなりすぎて 僕を忘れてもいい
それでも 僕は大丈夫だから
別れの日が近づいていること知っているリ・ジョンヒョクは、ユン・セリが自宅で心地よく過ごせるよう気を配る。
たとえば、不眠症の彼女が眠れるよう、子守唄代わりにお気に入りの曲をピアノで弾いて録音したり、麺の作り方をメモしたり、ユン・セリの身長に合わせて棚に食料を配置したり。
「明日も会えると思いながら生きよう」
そう思わなければ生きていけないし、そして、実際にそうやって生きていこうとリ・ジョンヒョクは決めている。
そんな彼の「心の言葉」なのだ。
お互いを想い合うだけでなく、相手の幸せこそを第一に考えての言葉だからこそ心打たれる。
【その5】最終話
会いたいと 心から願えば 会いたい人に会えるかと聞いたろ?
きっと会える
軍事境界線での別れのシーン。
「もう会えないの? 二度と会えない? 一生?」
涙で顔がぐちゃぐちゃになっているユン・セリの言葉に、胸がえぐられる思いのリ・ジョンヒョクが言った言葉。
現実を鑑みれば、これは今生の別れだ。
でも、彼らは希望を捨てない。
というか、捨てては生きていけない。
叶わぬ夢なのかもしれないその言葉を、一語一句大切に吐き出すリ・ジョンヒョクと、その言葉を一言でも逃すまいと受け止めるユン・セリの姿に、もう、泣くしかないという感じ。
何度も繰り返し見て、何度でも泣く。
まさに「愛の不時着」を体感するのがこの場面。
ところで、これらのセリフの多くは、視聴者が言われたい言葉そのものなのだと思っている。
そして、視聴者が望む言葉を、リ・ジョンヒョクがユン・セリを通して我々に伝えているとも言えるのかな。
事実、それらの言葉はときめきと共に観る者に届き、我々を、何度も、何度も「愛の不時着」へ誘うのだ。
「愛の不時着」脚本「愛の不時着 完全版」では、字幕で省略されているセリフも楽しめます。文字で味わう「愛の不時着」も別の感動がありオススメです。